ことのはじまり(3)


【この記事は遡及入力です】

by: くとの

 「華強電子世界」に続いて行ったのは「賽格広場」。こちらは「華強電子世界」のような商業ビルというより、超高層ビルの下層階が商業ゾーンになっている感じです。ビルのごく一部とはいえそれでも驚くべき広さ。
 ここは華強電子世界よりはコンシューマ寄りで、1階こそ電子部品店が多かったのですが、PCパーツショップ、タブレット(スレート)、家電など一通りあります。イメージとして近いのは、名古屋のアメ横ビル(20世紀末まで)を超巨大化したようなものでしょうか。中華タブレットはWi-Fiでも役に立つし、日本語化の問題はなさそうだし(なぜか日本語でデモしていたのを発見)、何より日本円で1万円強なので1枚ほしかったのですが、日本でも買えるだろうと我慢しました。
 賽格広場の4階あたりでついに見つけたのが、電球色のテープLED。白色は結構多かったのですが、電球色は数店しか持っていませんでした。中でも、人の良さそうな夫婦の店(やはりスペースは2畳もないくらい)で買うことにしました。5mが1本(500素子)で50元という安さです。10本くれと言うと、ショーケースだけでは足りなかったようで近くの段ボール箱から「イーアルサンスー…」(広東語でなく普通話)と探してくれました。ここも近くにある製造工場の出店のようです。驚いたのは、こちらから言わないのに、アルミの袋(しかもシリカゲル入り)に入った全品を出して点灯チェックしてくれたこと。20年くらい前の日本の電気街の雰囲気を感じて、少し感動でした。
 ついでに買ったのは、キヤノンの大型プリンタのローラ。日本では単体入手できないのですが、OEM先のヒューレット・パッカードの型番で言って入手。大量に買ったので店頭在庫では足りず、倉庫から持ってきてもらい翌日取りに行きました。ビジネス客を相手にするせいか、その店の小姐だけは英語で対応してくれました。一方、買って失敗したのがLED電球。流行りもののせいなのか、電気街の店頭であちこちのお店の人がハンダごてで作っています。チップ部品を使うとはいえ、これも日本の昔の電気街を思い起こさせます。これも買うときに頼んでいないのに点灯チェックしてくれたのですが、日本で使うとどうにも光量が足りません。スペックシートでは90V以上対応のはずなのですが、日本の100Vでは元気がないようでした。
 あと、行って面白かったのが、あるビルの最上階フロアに真空管アンプの店が集結していたこと。日本のオーディオマニアな方には知られた場所らしいです。店構えにも外国人相手のような高級感が漂います。ウェスタン・エレクトリックなんかの真空管をコピーして売り、顧客の要望を聞いていたら、いつの間にか一定のレベルに達していたということなのでしょうか。2A3、KT88なんかが普通に売っています。300Bのペアを買って小学生以来のアンプ製作でもと一瞬思いましたが、出力トランスを買うあてがないのでやめました。だいたい、そんな金属の塊を買ったところで持ち帰るのが大変です。
 深センと言うと珠海や東莞と並んで治安が悪いというイメージですが、電気街のビル内(携帯電話関係を除く)にいる限りはそこまで危険を感じませんでした。お店はライバルとして一緒に仕事をしていて、客も仕事なり目的があって来ているという印象です。ただ、客同士のケンカは目撃しましたし、ゴミを通路に投げ捨てる(清掃員が常時巡回しているのですぐ回収される)のは見ていて文化の違いを感じます。また、文具城もあるということで行ってみましたが、地下鉄を降りて歩いた後、街の雰囲気に危険を感じて撤退しました。こぎれいだけどどこか危ないという感じです。これは、出稼ぎの人が集まった人工都市ならではの、ある種の「文化のなさ」によるのかな、と思ってしまいました。

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